おととい(2月27日)、ついに発売となったマツダ CX-3。昨年のロサンゼルスショーでの発表からあれこれ考えているうちにどうしても乗ってみたくなった僕は、早速、ディーラーへと脚を運んだのだった。
通常ならジャーナリストによる試乗レポートがネット上でバンバン出てきてもよさそうなどころだが、このクルマについてはあまり見かけない。そんな中での試乗。スペックは確認していたが、果たしてどんな乗り味なのか、非常に興味がある。というか、心惹かれていたというのが正しい。
クロスオーバー仕立てのデミオ
CX-3は、先に出たデミオと共通の部分が多い。ざっくり言うと、デミオをいま世界中で流行りのクロスオーバー風に仕立てたのがCX-3だ。SUV的な格好をしているのでSUVとも言えるのだが、悪路を走破するようなタフな用途に対応した本格的SUVとは異なる。その点は頭に入れておくべきだろう。
エンジンはデミオと共通の1.5L SKYACTIV-D。つまり、シングルスクロールのターボディーゼルだ。最大トルクはデミオよりもさらに20Nm高い270Nm。デミオは1.3Lガソリンエンジンもあるが、CX-3はディーゼル1本。ミッションは6ATと6MT、駆動方式はAWD(4WD)とFFがそれぞれ選べる。
さて、前置きはこれぐらいにして、試乗レポートに移るとしよう。
より静かなエンジン、より滑らかな乗り心地
今日試乗したのはAWDとFFの2台。ミッションはどちらも6AT。グレードはAWDの方が3つあるグレードのうちの真ん中のXD Touring。FFの方が最上級のXD Touring L Package。グレードに関しては走行性能に変わりはないので、レポートでは触れないでおく。
まずはAWDモデル。エンジンのかかったCX-3に乗り込んでドアを閉めた瞬間、「おっ、静かだな」と思った。デミオではアイドリング時にカラカラ音が鳴っていたのが気になったが、CX-3は気にならない。そろりと走り出してみる。やはりそうか、と思ったのは低回転時のトルクの細さ。しかし、デミオに乗った時ほどは気にならなかった。それは僕が事前に予想して構えていたからかもしれない。アクセルをさらに深く踏み込んでみる。グイーンと加速。特に3,000回転からが力強い。が、これまたデミオほどのパンチはない感じ。最大トルクは太くなったが、以前試乗したデミオのFFディーゼルよりも200kg重い車重のせいか。しかし、悪い印象はあまりない。全体的にディーゼル音が抑えられ、デミオよりも上質感がある。
そして、エンジン以上にいいと思ったのは乗り心地。荒れたデコボコアスファルトの上を走っても嫌な振動や突き上げが全くない。実は同じコースを事前に僕のルポGTIで走ったのだが、ガタガタと振動がかなり伝わってきていた。まあ、それと比べるのはどうかと思うが、雲泥の差であるのは確かだ。デミオと比べても、かなり滑らか。では、コーナリングはどうかというと、これがなかなかいいのだ。ロールはあまりしない。実際のところはそれなりにしているのだろうけど、体感的に、Gに無理がない。「おっとっと」っていう感じがないのだ。これが「ダイアゴナル」な姿勢変化を実現したセッティングなのか! と思った次第。
ダイアゴナル云々についてはこちらのインタビューがおもしろいので是非。ちなみに、2ページ目からが本編です(^_^;)
フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える第274回 マツダ「人馬一体塾」 その7 「ええっ、ウソ?!」連発の最終回
いやはや、CX-3がすっかり気に入ってしまった。
FFモデルは脚が硬い?
続いて、FFモデル。今日は雨で路面が濡れているとはいえ、滑るようなシチュエーションではないのでAWDモデルとの走りの違いはわからなかった。でも、違う点は他にあった。それは乗り心地だ。こちら(FF)の方が硬い。ゴツゴツした感じがある。さきほどのAWDモデルは上質感があったが、こちらはそれが乏しい。これは重量のせいか、それに伴うセッティングの違いのせいか。ちなみにAWDとFFの重量差は70kg。これが効いているのだろうか。それとも個体差なのか。量産が進んで品質が安定してくると、もしかしたらまた違ってくるのかもしれない。それに、まだ新車なので脚の動きが悪いのかもしれない。ともかく、さっき乗ったAWDモデルの方が断然よかった。
もう一つ、違いがあったのはエンジン音。若干、AWD車よりもFF車の方が音が大きいように感じられた。これも個体差なのかどうなのかわからない。ちなみに、どちらもナチュラル・サウンド・スムーザー(ディーゼル特有の音を低減するオプション品)は装着していないので、同じエンジンのはずである。今日は雨だったので、もしかしたら雨音によってエンジン音の聞こえ方に違いが生じたのかもしれない。
ナチュラル・サウンド・スムーザーは試せず
ところで、マツダ新開発のナチュラル・サウンド・スムーザーにはとても興味があったのだが、今日はこれを装備した試乗車がなかったのでその効果は確認できなかった。ディーラーの営業さんもまだ体感したことがないのだという。いずれ、装着車に試乗してみたいところだ。もっとも、今日試乗したAWDモデルのエンジン音がすでにだいぶ静かだったので、必ずしも必要ないのかなというところ。でも、僕はディーゼルのカラカラ音があまり好きではないので、それがより静かになるならそれに越したことはない。なお、ナチュラル・サウンド・スムーザーは残念なことに、ATモデルにしか設定がない。効果があるなら、MT車にも設定してもらいたい。是非!
なお、ナチュラル・サウンド・スムーザーについては、こちらの記事などをどうぞ。
マツダ、新型「CX-3」のディーゼルノック音を抑制する「ナチュラルサウンドスムーザー」の仕組み
CX-3、想像以上にいいクルマだった!
まとめ。
○なところ。静かで踏めば気持ちのいい加速をもたらすエンジン。上質な乗り心地(特にAWDモデル)。
×なところ。エンジンの低回転域のトルク不足とレスポンスの悪さ。車両価格が高い!
値段については、出してもらった見積もりが300万円オーバー。ひえぇ。こんだけの値段になると、他にもいろいろなクルマの選択肢があるわけで。でも、CX-3にしかない個性、CX-3でなければならないものがある。四駆でMTが選べるのもそのひとつだ(ちなみに、デミオにはその設定がない)。
僕は正直、ほしい! ネックは値段だ。個人的に、そこが目下の大モンダイである。
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